【主な登場人物】※すべて仮名 年齢は2002年時点
滝(38歳)
このブログの著者。
長い無職生活のすえに零細ブラック企業マルビに入社するが、砂川社長との確執のため、わずか3か月で解雇される。
砂川社長(38歳)
事務機器会社を退職したあと、奥さんの親に資金を出してもらい有限会社マルビを設立。また「経営の多角化」と称して愛人と居酒屋も営んでいた。
「訴状」「準備書面」「答弁書」とは?
12月上旬ある日の夜。
私はコンビニの深夜アルバイトが休みだったので、次回の裁判に提出する準備書面を作っていました。
砂川社長が提出した答弁書の内容に反論するためですが、よくもまあ、これだけウソ八百並べられるものだと感心するほど捏造に溢れた内容でした。
ところで今さらですが、裁判で使われる書類について説明しておきましょう。
民事訴訟は原告が「訴状」を提出することで始まります。よくニュースとかで「訴状が届いてないのでコメントできません」とか言ってるアレです。
訴状には裁判所に対して、こういう判決を出してくださいという要求(請求の趣旨)や、その理由(請求の原因)、添付書類の名前を書きます。
訴状は被告にも送られ、その内容に対して被告が、これは認める、これは認めないと主張するのが「答弁書」です。答弁書も写しが原告に送られます。
訴状と答弁書が1回ずつ提出されたあとは、どちらの書類も「準備書面」という呼び方に変わります。まあ、司法界独自の業界用語ですね。
ちなみに、訴状や答弁書がどんなものかは、裁判所のホームページからダウンロードできます。
裁判では相手の主張に黙っていると、それを認めることになります。少しでも事実と違うところは、キッチリ反論しなければなりません。
つまり私は、砂川社長の答弁書のほぼすべてに反論しなければなりませんでした。
では実際にどんな内容の準備書面を書いたのか、その一部をここに披露します。
被告提出の答弁書について
答弁書の1で被告が記述している「6月に入ってから原告の職務に対する態度が悪化し」という部分について、被告は具体的な根拠を明らかにしていない。よって否認する。
同1で「再三にわたり注意・指導してきた」とあるが、原告は被告より注意・指導を受けたことはない。よって否認する。
同1で「反省を促す意味で、そんな態度なら明日から来なくてもいいと言わなければならなくなるぞ。しっかりやってくれよ、と伝えた」とあるが、原告が言われたのは「わかった。明日からもう来なくていい」だけであり、反省を促しているとは思えない。よって否認する。
同1で「原告は激高して当方の胸ぐらをつかみ」とあるが、その事実はない。よって否認する。
同1で原告が「備品を蹴り上げながら社を出ていき」とあるが、そのような事実はない。よって否認する。
同1で「連日にわたって、金はいつ払うんだ? ふざけんなよ!」と数十回以上の電話をかけてきた」とあるが、原告が電話をしたのは、労働基準監督署の監督官から支払意思を確認するように言われたためであり、その回数も3回である。しかも3回目は電話がつながった途端に被告側に切られている。数十回以上と回数を主張するなら、通話記録等で証明することを求める。よって否認する。
同2「超過勤務手当支払について」で、タイムカードの記録を「そのまま計上されることに納得できない」とあるが、タイムカードに就業時間を記録することは被告側の指示によって行っていたので、その記録こそが就業時間を証明するものである。
同2で「正規の就業時間内においても正当に職務を遂行したとは認めにくく、7月に入ってからは日報に記載する内容にも虚偽が幾度となくあった」とあるが、その根拠が明確ではなく、また、事実ではない。よって否認する。
深夜に一人黙々とこんなことを書きつづっているうちに、時計の日付が変わりました。今日は私の39回目の誕生日です。
今さら祝うような歳ではありませんが、裁判の書類を書きながら迎えるのは、さすがにわびしくなりますね。
私は社長への怒りと怨念を込めて、北斗百裂拳のごとくパソコンのキーを撃ち続けました。
あたたたたたたたた!
裁判員制度より休日の裁判実施を
ところで、裁判が平日の日中しか行われないって、ものすご~く不便じゃないでしょうか?
「すんません、水曜日は裁判なんで休ませてください」なんて職場には言いにくいですよね。
私も最初は平日が休みの仕事に就こうと考えましたが、裁判は平日の何曜日になるかもわからないので、裁判が終わるまではとコンビニの夜勤アルバイトに就いたわけです。
法務省は国民に余計な負担を負わせる裁判員制度なんかより、土日・祝日も裁判を受けられるようにしてほしいと思います。