第2章と第3章でご覧いただいたように、有限会社マルビの砂川社長は労働基準監督署や裁判所で私を「解雇した覚えはない」と言い張りました。あとから不当解雇をうやむやにするのはブラック企業の常とう手段です。
こうした「解雇された」「していない」という水掛け論を防ぐために、会社には退職の証明書を交付する義務があります。
会社は退職した従業員から請求されたら、
- その従業員が勤めていた期間
- 担当した仕事の内容
- 役職
- 賃金
- 退職の理由(や解雇の理由)
を証明する書類を遅滞なく交付するように義務づけられています。
また解雇を予告した従業員から退職日までに解雇理由についての証明書を請求された場合も、会社は遅滞なく交付する必要があります。
これらの書類は「退職理由証明書」や「解雇理由証明書」と呼ばれますが、法律には「証明書」としか書かれていないので、会社によっては「退職証明書」や「解雇証明書」など書類の名称は異なることがあります。
また「遅滞なく発行」といっても何日以内と決まっているわけではないので、請求しても待たされることがあります。
とくに会社が訴訟を警戒して弁護士と相談しているような場合はなかなか送ってこないことも考えられるので、〇月〇日までに交付しろと期日を指定するといいでしょう。
こうした証明書には解雇の事実を確定させることの他に、あとから解雇理由を追加させないようにする効果があります。
最初に証明書で解雇理由を確定させておけば、裁判などで会社があとから解雇の理由を付け加えても信ぴょう性は低くなります。
裁判所にすれば「それが解雇の理由なら、どうして最初から証明書に書いていないの?」となるので、理由をあと付けするほど会社側にとっては不利になります。
会社によってはクビにする社員に「解雇予告通知書」といった名称の書類を渡すこともありますが、これは法律で定められた退職時の証明書ではなく、会社が形式的に交付しているだけのものです。
それでも裁判などで解雇の証拠となるので、頭にきても破り捨ててしまわず、ちゃんと保存しておきましょう。