労災の申請は個人でもできる
労災(労働災害)とは、仕事が原因で労働者がケガをしたり病気になったり死亡してしまう事故をいいます。そうなれば、とうぜん会社など働かせた側に責任が生じます。
しかし「労災」と聞くと「労災 会社 認めない」など、そのまま検索キーワードになりそうなフレーズが頭に思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
会社が労災申請に協力しないことは珍しくありません。それには、いくつかの理由があります。
- 労働基準監督署の調査が入るとマズイことがある
- 役所の仕事ができなくなる
- 労災保険料の割引がなくなる
- 使用者や部署の責任者が保身のために拒否する
そんなときでも、労災申請は個人でできます。
会社が労災申請に協力しない場合は申請書の会社記入欄を空白のままにしておき、別紙に会社が労災申請に協力してくれなかったと記述して申請書と一緒に労働基準監督署に提出します。
労災の対象となる労働者
労災保険は給料をもらって働くあらゆる労働者が対象となっています。
たとえ1日限りのアルバイトでも、不法滞在中の外国人労働者でも、給料をもらって働くすべての労働者は仕事中に負ったケガや病気、後遺症、死亡などが労災保険で補償されます。
労災保険は事業所単位でかけるものなので、雇用保険のように労働者ごとに加入する保険とは違います。なので1時間だけの労働だろうと、そのあいだに負ったケガや病気はすべて労災保険の支払い対象となります。
通勤の行き帰りも労災の対象
通勤中の事故も労災の対象となります。出勤時だけでなく帰宅時も対象です。ただし、その際に問題となりがちなのが通勤経路と方法についてです。
会社は通勤手当を算出するため、労働者に通勤ルートと交通手段を申告させることがあります。もし事故に遭ったときに経路や方法が申告と違うと、それを理由に労災申請に協力しないことがあります。
しかし申請した経路や方法と違っても、その通勤方法が合理的であれば問題ありません。
帰宅途中で買い物したり保育園への送り迎えなど、日常生活に必要なことなら寄り道しても問題ありません。バスや電車で通勤すると申告して、自動車やバイクで通勤していても問題ありません。
通勤災害として認められる条件と通勤手当の支給条件は無関係ですし、労災時の通勤経路や方法が合理的かどうかは、会社ではなく労働基準監督署が判断します。
できれば最初から労災指定病院へ
ケガで病院に駆け込むときは、受付や診察時に仕事中や通勤中のケガと言っておきます。
そうすれば病院も労災として扱ってくれるので、会社に労災かくしをさせないための対策にもなります。
もし余裕があれば、最初から労災指定病院に行ってください。労災指定病院なら窓口での支払いは必要ありません。
労災指定外の病院を受診すると、いったん治療費の全額を自己負担することになります。
労災認定されれば治療費は戻ってきますが、できれば最初から労災指定病院を受診するほうが手続きもスムーズに進みます。
一度、会社の近くや通勤途中にある労災指定病院を確認しておくといいでしょう。
また、労災で受診するときは自分の健康保険を使わないでください。
労災なのに健康保険を使ってしまうと自分自身が「労災かくし」に加担することになりますし、治療費の一部を自分で負担することになります。
労災保険なら治療費はかかりませんし、会社や労災保険から休業中や後遺症などの補償も受けられます。
とくに交通事故は時間が経ってから後遺症が出ることがあるので、絶対に自分の健康保険は使わないようにしてください。
ちょっとした打撲程度のケガなら自分でシップを貼っておくことも多いでしょう。軽度のケガなら大ごとにしたくないという気持ちは当然です。
しかし骨折などの重傷まで引き受ける必要はありません。
労災を申請すると会社から睨まれると心配する気持ちもわかりますが、労災かくしが発覚すると会社が送検されることもあり、なおさら悪い事態になってしまう可能性もあります。
会社に労災申請を断られたら、そういうことも説明してください。労災は労災として処理することが最善(かつ、あたりまえ)の方法です。
それでも労災申請に協力しない会社は、れっきとしたブラック企業です。そんな会社のために自分を犠牲にしたいと思いますか?