労働基準監督署へ行くときの注意点

会社とのあいだにトラブルが発生した場合、まず思いつくのは労働基準監督署(以下、労基署)に行くことですね。しかし、労基署へ行けばどうにかしてくれるだろうと思うのは甘い考えです。

労基署の職員は一人で膨大な案件を抱えているため、すべての問題に関わっていられないためです。

企業を指導する労働基準監督官(以下、監督官)は労働人口2万人に対して1人しかおらず、これはILO(国際労働機関)が勧告している半分の人数でしかありません。そのため、労基署は来署する人たちのすべてを監督官に取り次ぐことはしません。

労基署へ行くと、まず「相談員」が応対して来署者から話を聞きます。そして必要なアドバイスなどを行って、もう一度会社と話し合うように勧めます。言い方は悪いですが、相談員の仕事は来署者を追い返すことでもあります。

さらに問題なのは、相談員の質の悪さです。労基署の相談員というと法律のプロのように思えますが、フツーに求人募集で集められたシロートも少なくありません。そういうシロート相談員にあたるとテキトーなアドバイスをされて、余計に問題をこじらせかねません。

だからこそ、ある程度は労働法と言われる法律の基礎知識を身に着けておく必要があります。

監督官に取り次いでほしいなら「相談に来ました」とは言わないことです。相談ではなく、「給与の未払いについて申告に来ました」などと言うのが正解です。

そのときに必要となるのは、会社が法律に違反しているという証拠です。

残業代を払ってくれないと申告するなら、タイムカードなど残業をした証拠と、給与明細が必要になります。そうした証拠もなしに申告しても、監督官に取り次いでもらえる可能性は低いでしょう。

監督官という他人に違法があることを知ってもらうには、しっかりと証拠を集めておくことが大切です。