【コラム】解雇されても認めるな!

このサイトの前半では私が有限会社マルビ(仮名)を解雇されてから、労働基準監督署への申告や個人訴訟などを経て未払い賃金を回収するまでの顛末を紹介しました。

解雇されてから1年がかりで未払い賃金を回収したものの、この一件で私は戦略的に大きなミスをしていました。

それは、解雇を最初から受け入れてしまったことです。

そもそも解雇される前から辞めようと思っていた私は、社長の「明日から来なくていい」という発言を受け入れ、さらに解雇予告手当まで要求して立ち去りました。

ところが、これは戦略としては得策ではありませんでした。というか、大損でした。

解雇を認めてしまうと、会社に請求できる金額は賃金や解雇予告手当くらいしかありません。

しかし解雇を拒否すれば、裁判などで解雇は無効と判断されたときに、その時点までの給与やボーナスも請求できます。

私が言われたように「もう来なくていい」というセリフは従業員をクビにするときに使う経営者の常套句ですが、会社側にとってはあとから言い逃れしやすい曖昧な表現でもあります。

「もう来なくていい」と言われたときに必要なのは、誰が、どういう意味で発言したのかを確認することです。

同僚と口論になったときに「お前なんか辞めてしまえ!」と言われても、それが強制力のない悪口でしかないことは言った本人も言われたほうもわかっています。

しかし上司に「明日から来なくていい」と言われた場合は「それは解雇という意味ですか? それとも自宅待機ですか?」と確認することが必要です。

解雇という意味なら従う必要はありません。

解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当である」ことが必要と法律に明記されているので、これらの条件が裁判所に認められなければ解雇は成立しません。

いきなり解雇された場合でも絶対に認めず、できれば翌日もいつもどおりに出社してください。

そのとき「何しに来た」とか「来なくていいと言っただろう」など、なんらかの発言があるでしょうから、それをボイスレコーダーに録音しておくと、あとで法的に戦うときの有力な証拠となります。

仮に自宅待機という意味なら(そんなはずないでしょうが)、いつまで待機すればいいのか言わせたうえで、待機中も給与は払う必要があることを確認させます。

また、速やかに解雇理由証明書か退職証明書を会社に請求してください。会社は労働者から証明書を請求されれば拒否することはできません。

そして、その時点で法律相談を受けたり弁護士に相談してください。

基本は会社から解雇されても認めず、自分はまだ従業員だという地位確認を求める、つまり職場に復帰させろという建前で争うのが定石です。

裁判などでは最終的に和解という形で決着することがほとんどです。その時点まではまだ従業員としての地位が継続しており、会社には和解が成立するまでの給与を支払う義務があります。

私も、せっかく社長が「解雇はしていない」と言い張ってくれたんですから「じゃあ復職していいんですね?」という作戦をとるべきでした。

しかし当時は書籍やインターネットの情報が少なかったので、こういう戦法が定石だとは、ずっとあとになるまで知りませんでした。

知らないというのは、ほんとうに損をしますね。