内容証明郵便で未払い賃金の消滅時効を止める

消滅時効は合法的な賃金の踏み倒し

第4章の「未払い賃金は請求しないとなくなる」でも述べたとおり、一定期間が過ぎると消滅時効が成立して会社には未払い賃金を支払う義務がなくなります。つまり、合法的に踏み倒せることになります。

【賃金の消滅時効までの期間】

  • 2020年4月1日以降からは5年、ただし当分のあいだは3年
  • 退職金の消滅時効は5年のままで変わらず

「え、なんで当分は3年なの?」と思いますよね。これには経済界からの圧力があったとか、政治家が勝手に忖度したとか噂されています。

「先生、いきなり5年分の未払い賃金を請求されたらかなわんわ、殺生でっせ!」「わかってまんがな。魚心あれば水心。当分の間は1年だけ伸ばして3年ちゅうことでお茶にごしましょ!」なんてやり取りが料亭でおこなわれたかどうかはわかりませんが、そういうことです。

ほんらい賃金というのは、人様の貴重な時間と労力をお借りして、経営者が自分の銭儲けを手伝ってもらった対価です。それを合法的に踏み倒そうなんて浅ましい考えは、最高裁判所の判事が許してもエンマ大王は許しません。

しかも「当分のあいだは」って、いつまで? ねぇ、いつまでなの? と突っ込みたくもなりますね。ま、それを今ここで言ってもしょうがないんで、せめて3年分の未払い賃金だけはキッチリ請求しましょう。

消滅時効間近、どうなる未払い賃金!

気がつくと未払い賃金の消滅時効がすぐ目の前に! もはや絶体絶命なのか? そんなとき、消滅時効の成立を6か月だけ伸ばしてくれる魔法のお手紙が「内容証明郵便」です。

内容証明郵便とは、

  • いつ
  • どんな内容で
  • 誰から
  • 誰に出したか

を郵便局が証明してくれる郵便です。

相手が1名(1社)の場合は同じ内容の文書を3通用意し、1通を郵便局が保管、1通を相手に送付、1通を原本として自分が保管します。また、相手が受け取っていないと言い逃れることのないように「配達証明付き」で送ります。

未払い賃金の請求を内容証明郵便で送る理由には、会社に対して心理的なプレッシャーを与える宣戦布告の意味があります。〇月〇日までに支払わなければ法的な措置をとる、と書くことで会社にこちらの本気度を伝えることができ、面倒な裁判沙汰になる前に支払われることもあります。

それで素直に払ってくれればいいんですが、まっとうなブラック企業が内容証明郵便くらいで支払う可能性は低いでしょう。それより、内容証明郵便のほんとうの狙いは「消滅時効の延長」にあります。

内容証明郵便で未払い賃金を請求すれば消滅時効の成立を6か月だけ止めることができるので、そのあいだに法的な手段をとることができます。

ただし、内容証明郵便はどこの郵便局でも受け付けているわけではないので事前に確認が必要です。

インターネットから「電子内容証明」を利用することもできますが、スマートフォンやタブレットには非対応のうえに、文書も「Microsoft Word」で作成したファイルのみなど、利用に関する制約が多いところが残念です。

また、内容証明郵便の書き方にも決まりがあるので、詳しくは日本郵便のWebサイトでご覧ください。

内容証明(日本郵便)