繰り返されてきた有期労働契約の雇止めが無効となる場合

パートやアルバイトなどでは、数か月とか1年単位で雇用契約を結ぶことがよくあります。こうした雇用契約を「有期労働契約」といい、使用者が有期労働契約を更新せずに契約終了することを「雇止やといどめ」と言います。

あらかじめ働く期間を決めているので、期間満了で契約終了しても問題はなさそうですね。

しかし、有期労働契約を何度も更新させながら切り捨てる事例が増えたため、有期労働契約でも合理的な理由のない雇止めは認められないようになりました。

労働契約法19条には有期労働契約者を保護する条文が定められ、次のどちらかに該当し、労働者から更新の申し込みがあれば、使用者はそれまでと同じ条件で承諾したとみなされます。

(1)何度か更新されたことのある有期労働契約の終了が、無期労働契約の解雇と同じくらいの重さだと認められる。

(2)労働者にとって有期労働契約がまた更新されると期待することに合理的な理由がある。

(1)は実質的に無期雇用と変わらないほど有期契約を繰り返しながら、企業に都合よく雇止めすることを許さないということです。

企業は業績が好調なうちは熟練した非正規労働者を重宝しますが、都合が悪くなった途端に切り捨てようとします。それを問題視したのが(1)です。

また会社から「これからも頑張ってくださいね」なんて言われると、更新に対する労働者の期待は当然高まりますよね。そうした期待を持たせておいて契約を打ち切るのはダメ、というのが(2)です。

労働契約法19条には労働者から契約の更新や締結の申し込みがあればとありますが、実際には「契約を更新(締結)してください」と言う必要はなく、雇止めに対して「困ります」とか「イヤです」と異議を伝えれば足ります。

それでも雇止めに関するトラブルが多発するので、厚生労働省は【有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について】というお触れを出しています。

【有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について】

(1)有期労働契約を結ぶときは、更新の有無を明示すること
(2)更新する場合があるときは、その判断基準を明示すること
(3)これらは書面で明示することが望ましい
(4)3回以上更新されているか、1年を超えて継続している有期雇用契約を更新しないときは、契約満了の30日前までにその予告をすること
(5)雇止めの予告をしたあと、または雇止めのあとに労働者から雇止めの理由について証明書を請求された場合は遅滞なく交付しなければならない
(6)1回以上更新し、かつ、1年を超えている有期労働契約を更新する場合、使用者は労働者の希望に応じて契約期間をできるだけ長くするように努めなければならない※契約期間の上限は原則3年

また有期労働契約の期間を過ぎても、そのまま労働者が働き続ける場合があります。

たとえば6か月契約のアルバイトだったのに7か月めもシフトに組み込まれていて、使用者がそれに異議を述べなければ、前回と同じ条件で契約が更新したとされます。

わたしが勤めていた会社には、その支店でいちばん古株のパートのおばちゃんがいました。部長ですら新人のころは世話になったことがあるほど、誰も頭が上がらない頼りになるおばちゃんでした。このおばちゃんも1年単位の契約を自動更新しながら65歳まで勤め上げたそうですが、だったら会社は正社員にしてあげればよかったのに、と思います。