第2回口頭弁論はスピード展開

【主な登場人物】※すべて仮名 年齢は2002年時点

滝(38歳)
このブログの著者。
長い無職生活のすえに零細ブラック企業マルビに入社するが、砂川社長との確執のため、わずか3か月で解雇される。

砂川社長(38歳)
事務機器会社を退職したあと、奥さんの親に資金を出してもらい有限会社マルビを設立。また「経営の多角化」と称して愛人と居酒屋も営んでいた。

簡易裁判所の裁判官

裁判官から和解の提案

あけおめ~! と清々しく新年を迎えることもなく、2003年1月15日13時30分から2回目の裁判です。

開始時刻が近づいたのでいつもと同じ6号法廷に入ろうとしましたが鍵がかかっています。

廊下で待っていると、定刻直前に廷吏ていりの女性がきて開錠。私が原告席に着くと、すぐあとに砂川社長も入ってきました。

こいつが時間どおりなのは珍しいですね。今年の目標は「遅刻をしない」でしょうか。

法廷には私と社長、廷吏の女性の3人だけ。重苦しい沈黙が流れます。

被告席に顔を向けると、向こうもこちらを見ます。

前回ドタキャンしやがった社長へあけおめ代わりにガンを飛ばしてみましたが、シカトされました。

裁判の開始時刻は過ぎましたが、裁判官たちが来ません。まさか今度は裁判官がドタキャン? 

ということはなく、13時40分ころ法廷前側のドアから裁判員ともう1人、続いて書記官が入廷しました。

この「もう1人」は司法委員と言って、主に和解を取りまとめるために弁護士などの有識者から選ばれる人です。

つまり司法委員が同席するということは、この裁判を和解で終わらせようとする意図が裁判所にあることを意味します。

裁判官は社長に前回の宿題となっていた、私が解雇の証拠書類として提出した離職票はマルビで作成したものか尋ねると、社長はマルビの作成だと認めました。さらに社長は私を解雇したことも認めます。

年が改まった途端に態度も改まりました。今年の目標は「素直な心」かもしれません。

ともあれ、社長はこれ以上屁理屈をこねてもムダだと観念したようで、ひととおり争点は解決したことになります。

それから私と社長に対する本人尋問となりました。

尋問と言うと、司法ドラマではハイライトシーンのひとつですね。とくに相手の弁護士から、答えに困るような意地悪な質問をされるイメージがあります。

しかし私の場合は原告・被告ともに弁護士を立てていないので、質問をするのは裁判官だけ、答えるのも当事者だけです。

 

 

私に対する裁判官の尋問はこれまでの主張を確認する程度で、あっという間に終了。それでもなんか緊張しました。

社長に対する尋問も、会社の業務内容や従業員数など基本的なことばかり。

ただし2002年7月24日に私を解雇したときの様子については、一部違うと言います。

社長はあのとき、私に壁ドン状態で身動きできないまま延々と怒鳴りつけられたことをそうとう根に持っているらしく、

「こんなに顔を近づけて怒鳴られたんですよ! こんなですよ?」と、身振り手振りを交えながら必死に裁判官へアピールします。

「ようするに、多少のいざこざがあったということですね? はいっ!」と、裁判官はもうウンザリしながら取り合いません。

労働基準監督官をウンザリさせ、裁判官までもウンザリさせるマルビの砂川社長。さすが筋金入りの●ズです。

そのあと、裁判官から私と社長に対して和解勧告が出されました。

つまり、これから先は支払方法などについて話し合いで解決したらどうか? ということです。

民事訴訟は大半が和解で解決します。

民間同士の揉め事は話し合いで解決するのが望ましいという建前と、和解なら裁判官は判決文を書かなくて済むからとも言われています。

私は和解の提案を拒否して、判決を出すよう裁判官に求めました。

たかが34万円ぽっちの賃金を半年も踏み倒されているのですから、こっちが譲歩する筋合いはありません。

それどころか、社長が菓子折りの一つも持ってきて土下座して詫びをいれるのが筋だろうくらいに思っていましたから、あくまでも判決で白黒つけたかったのです。

しかし、裁判官はしつこくしつこく、とってもしつこく和解を勧めてきます。

どうして裁判所って、こうも押しつけがましいんでしょうね。

「判決を出しても一括で払えないこともあるんですから、多少は譲歩しても、きちんと払ってもらうほうがいいんじゃないですか? それに和解でまとまったことは判決と同じ効力がありますから」と裁判官は言います。

ちょっと考えました。

たしかに勝訴しても「ない袖は振れぬ」作戦に出る可能性があります。労基署のときもそうでしたから、また同じ戦法をとってくる可能性は充分あります。

ならば分割でも確実に払わせるほうがいいかと思いなおし、裁判官がしつこく勧めるとおり和解に応じることにしました。