いざ、簡易裁判所へ!

【主な登場人物】※すべて仮名 年齢は2002年時点

滝(38歳)
このブログの著者。
長い無職生活のすえに零細ブラック企業マルビに入社するが、砂川社長との確執のため、わずか3か月で解雇される。

砂川社長(38歳)
事務機器会社を退職したあと、奥さんの親に資金を出してもらい有限会社マルビを設立。また「経営の多角化」と称して愛人と居酒屋も営んでいた。

まずは支払督促から?

2002年9月25日。

遅々として指導が進まない労働基準監督署にはもう期待できないので、いよいよ個人で裁判を起こすことにしました。

と言っても、たった34万円ぽっちの訴額ですから弁護士に頼むことはできません。そこで最初に考えたのは「少額訴訟」でした。

少額訴訟は1回の審理で終わるので、相手が債務を認めればスピーディーな解決が見込めます。

しかし、当時の少額訴訟は30万円以下の訴額に限られていたので(現在は60万円以下)、少額訴訟をするならマルビへの訴額を30万円に減額しなければなりません。

それでも砂川社長が支払わなければ通常の民事訴訟に移行します。

労基署のたび重なる指導にさえシラを切りとおしている砂川社長が、少額訴訟くらいで支払うはずありません。それなら最初から民事訴訟を起こすほうが早いでしょう。

訴額が140万円以下の民事訴訟は簡易裁判所の管轄となります。

地元の簡易裁判所を訪れると、俳優の竹野内豊が銀縁メガネをかけたようなイケメン書記官が出てきました。全身からエリート臭がプンプンしてます。

ひととおり話を聞いたイケメン書記官、まずはマルビに「支払督促」を送ってみましょうと言います。

支払督促は裁判所の名前で督促状を送りつけるものです。たとえば、貸した金を返してくれないとか、代金を支払ってくれないときなどによく使われます。

こういう場合、たいていの奴らは知らんふりを決め込んで踏み倒そうという気でいます。そこへ裁判所という「お上」から「はよ払ったりいな!」と書面がくれば、ふつうは「やべえ!」と思います。

 

 

支払督促がくれば、払うか争うかの二つに一つ。おとなしく払えば一件落着ですが、異議を申し立てれば通常の民事訴訟になります。ふつうは、これで払うしかないと観念します。

もちろん、ふつうじゃない砂川社長は支払督促ごときで払うはずありません。私は、労基署に指導してもらってもダメだったので民事訴訟をしたいと言いました。

しかし書記官は、もしダメでも支払督促の費用は裁判費用に充当されますからと、まったく聞く耳を持ちません。結局、書記官に押し切られて支払督促をすることになりました。

書記官は、もし支払督促で解決すれば余計な訴訟を受け付けずに済むと思ったのでしょうが、こういう市民の意向を無視する裁判所の体質は、このあとの裁判でも経験することになります。

余談ですが、このとき裁判所の受付で隣りに若い女性がいました。

服やらアクセサリーを買いまくったローンの残高が300万円ほどになったので自己破産したいと言ってます。

自己破産は多額の借金もチャラにできる人生一発逆転の切り札ですが、ブランドものを買い漁ったりギャンブルなどの浪費は「免責不許可事由」として認められない可能性もあります。

ただ、じっさいには裁判所もそこまで杓子定規ではなく、個人の人生を立て直すことを優先して柔軟な対応をしてくれることが多いようです。

そのあと彼女がどうなったのかは知りませんが、くれぐれもご利用は計画的に。

さて、支払督促を送ってから数日後、予想どおり砂川社長は「この請求に不服があります」と書いた「督促異議申立書」を送ってきました。

だから最初から民事訴訟を受け付けてくれればいいのに。裁判所ってところは、ほんとに押しつけがましくてイヤですね。

それでも、これでようやくマルビとの勝負は民事訴訟という新たな局面を迎えることになります。