こんなときも労働時間

私たちはみんな、お金のために自分の時間を売って働いていますよね。

え? 生きがいや社会貢献のために働いている? カネは二の次三の次?

帰れ!

そんな人でも生活するためのお金は必要。働いた時間はキッチリお金に換えるのが当然です。じゃないと、プロとは言えません。

ところで「労働時間」って、いつからいつまでと思いますか?

始業時間から終業時間、それから残業時間や休日出勤などはわりと簡単に思いつきますよね。

じつはそれ以外に「え、この時間も?」と思うような時間も労働時間になることがあります。

労働時間は「労働者が使用者の指揮命令下に置かれた状態」と定義されているので、次のような場合も労働時間となります。

制服に着替える時間

企業によっては指定の制服を着て働くこともありますね。その制服への着替えが就業時間外であれば、会社は着替えにかかる時間分の賃金を払う必要があります。

たとえば、就業時間は午前9時からなのに、制服への着替えはその前に済ませなければならないとされている場合。

けっこう、みんなあたりまえと思っているかもしれませんが、着替えの時間も労働時間になるので、企業は着替え時間分の賃金を支払う必要があります。

と言うと、「着替えの5分や10分くらい、別にいいんじゃない?」という声も聞こえてきそうですね。

ほんとうに、そうでしょうか?

1回の着替えに5分かかるとしたら、始業時と終業時で毎日10分。

月22日の出勤なら、10分×22日=220分で約3.7時間。

時給900円としたら月に3,330円、1年で39,600円にもなります。

こうしてお金に換算してみると、毎日10分の着替え時間もバカにできないことがわかりますね。

始業前の朝礼や準備、終業後の片付け

着替えと同じように、就業時間外に行われる朝礼や準備・片付けなども労働時間になります。

始業時間は午前9時なのに朝礼の8時50分までに出社しろというなら、会社は毎日10分間の時間外手当を払わなければなりません。

待機やお昼の電話当番などの「手待ち時間」

「手待ち時間」って、あまり聞きなれない言葉かもしれませんね。

店員さんがお客さんを待っている時間などを「手待ち時間」と言います。

たとえ店が暇で1日じゅうマンガを読んでいたとしても、お客さんが来たらすぐに応対しなければならないので「使用者の指揮命令下に置かれた状態」で労働時間となります。

企業によっては、昼休みの電話当番を従業員が持ち回りでしているところもありますね。こういう場合も労働時間にカウントされるので賃金が発生します。

昼休みの電話当番は上司が気軽に命令したり、職場の人たちが自主的に始めることが多いので、賃金の発生する労働時間だという発想になりにくいので注意です。

仮眠時間は対応の義務があるかどうかで判断

当直時の仮眠時間はケースバイケースです。

なにかあったときに対応する必要があるかないかで、労働時間になるかどうか違ってきます。

たとえば仮眠室が用意されていて、朝までぐっすり寝ていられるなら労働時間にはなりません。

夜中でも電話に出たり何かあれば対応しなければならない場合は労働時間になるなど、働き方の実態によって異なります。

勤務時間外の研修等への参加

終業後に行われる研修会や勉強などで、参加する・しないの自由があれば労働時間にはなりません。

強制ではないと言いながら、ほんとうは人事考課に影響するなら労働時間になりますが、労働者がその証明をするのはむずかしいかもしれませんね。

持ち帰り残業

証明がむずかしい労働時間と言えば、自宅に持ち帰ってする仕事もそうですね。

上司から「明日までに資料を作っておけ」というハッキリした指示があれば、自宅で資料を作っても「使用者の指揮命令下に置かれた状態」ですが、それを証明するものが必要になります。

そのためには、持ち帰り残業をするときは必ず記録を残してください。

たとえば、手帳に「〇〇課長から案件の資料を明日までに作るように指示されたので自宅に持ち帰って作成する」と書き、作業をした時間を分単位で記録してください。

自宅から会社のサーバーにアクセスした記録も持ち帰り残業の証拠となるので、ログが入手できるようならしてください。

こうした残業は社内で行うほうが労働時間を証明しやすくていいんですが、最近は時間になったらパソコンが使えなくなって社内での残業ができなくなる企業も多いようです。

あまり頻繁に持ち帰り残業がある場合は、早い段階で弁護士に相談するほうがいいかもしれません。